プラチナ、K18、シルバー。
天然石と組み合わせ、一点ものだけを制作しています。
ひとつひとつの個性を見て、考えて、かたちにする。
Myumiは、そうやってジュエリーをつくっています。
2026年6月、六角形シリーズは、ワックスで石座と腕(指にはめる輪)の形をつくることから始まりました。
最初の7日間で、ラベンダークォーツ・レモンクォーツ・スモーキークォーツの3石分の石座と腕をひと通り作り上げました。ワックスの工程がほぼ完成したところで、制作途中のワックスを確認すると、精度が出せていないところが多数見つかりました。このままでは鋳造に出せないと判断し、3点の石座すべてとスモーキーの腕1点を最初から作り直すことになりました。
6日間かけて作り直しました。石座の壁の立ち上がりや爪を、より正確に作れるようになり、それまでヤスリだけで削っていた細部にデザインカッターを使うことで、仕上がりも安定しました。石座全体の厚みも、最初は厚めに残していたところを、0.5mmまで削り込めるようになりました。
石の縁の跡を消さずに爪をまっすぐ立ち上げること。石をワックスに埋め込むときに、気泡が入らないよう、傾かないように気をつけること。埋め込んだ石を傷つけずに取り出すこと。作業を進める中で、こうした細かな点にも注意が必要だと気づきました。
最初は六角形の石を、ラウンド型の石と同じやり方で作って、2回失敗しました。3回目でようやく、六角形の石はヤスリで面を出すほうが精度が高いと気づきました。ワックス自体も、薄く削るほど割れやすく、1mmを切ったあたりから急激にリスクが上がることがわかりました。
ワックス段階の精度が、その後の石留めの精度を大きく左右する。今回、そのことを実感しました。
鋳造すると、石座と腕は地金になって戻ってきます。ただ、この段階ではまだ完成ではありません。表面のザラつきや、わずかに歪んだ形を、ヤスリや磨きの工程を重ねて整えていきます。
今回は石座と腕を別々に作っていたため、ロウ付けする前に、石座の周りや腕とのつなぎ目、石座の裏側など、あとから手が届きにくくなる場所を先に仕上げました。先に整えておくことで、最後まで自分の思うラインや形を保って仕上げることができました。
その後、石座と腕をロウ付けします。0.1〜0.2mmほどのわずかなずれでも、石座と腕の位置が正確に決まりません。ピンセットでは位置がずれやすかったため、鉄製のワイヤー線で固定する方法に切り替えました。固定したあとでも微調整ができるため、平行や垂直を確認しながら位置を決めてからロウ付けしました。
ここから、それぞれの石に合わせた仕上げが始まります。
ラベンダークォーツは、覆輪にミル打ちを施した留め方です。
石を留める作業では、爪を必要以上に叩きすぎると加工硬化が起きてしまうため、7〜8回程度叩けば、ちょうど爪を倒す作業が完了するような力加減の調整が必要でした。
そんな中、石が少し傾いた状態で留まってしまいました。覆輪留めは、一度傾くと直せない構造です。
傾きを最小限に抑えて固定し、石留めを続けました。左右の地金の量に差があった部分を、伸ばしたり真上から叩いたりすることで、爪のかかる距離を均等に調整しました。石の傾きが目立たないよう、全体のバランスを整えて仕上げました。
その後のミル打ちでは、力加減が難しく、粒を思うような丸い形に仕上げることができませんでした。力を入れるとバリが増え、道具の先端が石に当たってしまうこともありました。そこでリングを固定する道具の高さを調整し、無理なく力をかけられるようにすることで、目安としていた粒の状態まで仕上げることができました。
レモンクォーツは、六本の爪で留めています。
石座はワックスの時点で精密に制作できていたため、爪を倒す際にガタつくことなくスムーズに進みました。
当初は、特に理由もなく丸い爪にしようと考えていましたが、全体の石座の雰囲気を見て、水滴形の爪に変更しました。中心から光が広がるような表情が生まれ、石座の下の腕も半円形にくり抜いた形にすることで、湖面から花火が打ち上がるようなイメージにつながりました。
ルースの状態で見ていたときは、レモンクォーツの透明度の高さが、そのまま強いきらめきとして表れていました。その輝きを生かした商品説明を考えていましたが、実際に石座へ留めてみると、透明度の高さによって、石座の内側のマットな表面まで透けて見えることがわかりました。
構造上、石留め後に修正することもできません。そのため、当初考えていた表現をそのまま使うのではなく、完成した状態で実際に見える表情に合わせて、商品説明を書き直すことにしました。現在の商品ページで「石座の内側がやわらかく透けて見え」とご紹介しているのは、このときの判断を反映したものです。
以前から、二段になった腕の形を作ってみたいと思っていました。ジュエリーのデザインとしては珍しいものではありませんが、自分ではまだ手がけたことがなく、今回のスモーキークォーツで挑戦することにしました。
二段の腕は、上の段と下の段が石座とつながる部分のバランスが難しく、太さやボリューム、ラインが自然に見えるように、通常より多くのことを考えながら進める必要がありました。石座と腕の接点は、石座がきちんとはまり、なおかつ腕のラインが自然につながり、石座が傾かない位置まで、慎重に削っていきました。
ロウ付けでは、石座と腕が触れる面積が小さいため、しっかり固定するのに苦労しました。ぐらついたままロウ付けをすると、石座が斜めになってしまうためです。
仕上げの段階でも、二段構造ならではの作業がありました。上の段と下の段が合流する部分には、ヤスリが入らないほど細かい隙間ができ、そこは糸だけを通して磨く「糸磨き」という工程で仕上げました。
結果として、高さのある石をしっかり支えながらも、腕に空間ができることで重たく見えない、橋のような構造に仕上がりました。上から見るとシンプルですが、横から見ると印象が変わるところが、気に入っています。
六角形シリーズの制作を通して見えてくるのは、うまくいかないとわかった瞬間に、その状態を隠さず受け止め、その時点でできる最善を選んでいくことです。全部作り直すことも、力加減や道具を変えて対応することも、実際の見え方に言葉を合わせることも、根っこにあるのは同じ考え方です。
そして、経験のない構造にも、必要だと思えば手を伸ばします。石の個性や状態を見ながら、留め方も、腕の形も、そのつど決めていく。Myumiのジュエリーは、そうやって一つずつ、石と向き合いながら形になっています。





